女性に多く発症しある日突然髪が抜け落ちるという見た目のインパクトと精神的なショックが大きい円形脱毛症ですがこれは単なるストレス性の抜け毛ではなく自己免疫疾患の一つと考えられており皮膚科医はその病態レベルに合わせて段階的かつ戦略的な治療プランを立てて完治を目指します。初期の単発型と呼ばれる五百円玉程度の脱毛斑が一つか二つできた段階では多くの場合は自然治癒する力を持っていますが早期回復を促し脱毛範囲の拡大を防ぐためにステロイドの外用薬や塩化カルプロニウム液などの血行促進剤が処方され炎症を抑えて毛根の活動を再開させる保存的な治療が行われます。しかし脱毛斑が多発したり結合して大きくなったりする進行期に入ると外用薬だけでは抑えきれないためステロイドを患部に直接注射する局所注射療法や抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬)の内服セファランチンやグリチロンといった飲み薬を併用して体内からも免疫の暴走を食い止めるアプローチが取られます。さらに頭髪全体が抜け落ちる全頭型や眉毛やまつ毛体毛まで抜ける汎発型といった重症例に対しては大学病院などの専門機関においてステロイドパルス療法という大量のステロイドを短期間点滴する強力な治療や局所免疫療法(SADBEやDPCP)という特殊な化学薬品を塗ってあえて軽いかぶれ(接触性皮膚炎)を起こさせることで免疫細胞の攻撃ターゲットを毛根から皮膚炎へと逸らす治療が行われます。また最近ではエキシマライトやナローバンドUVBなどの紫外線療法も有効性が認められており副作用を抑えながら難治性の円形脱毛症を改善する新たな選択肢として普及しつつあります。円形脱毛症の治療は一朝一夕には終わらず数ヶ月から数年単位の長い戦いになることもあり再発を繰り返すこともありますが皮膚科医は医学的な治療だけでなく患者の心のケアも重要視しておりウィッグの活用法をアドバイスしたり生活習慣の指導を行ったりしながら患者が前向きに治療に取り組めるよう伴走します。円形脱毛症は決して不治の病ではありませんので自己判断で民間療法に頼ったり放置したりせずに早めに皮膚科を受診し専門医の指導のもとで科学的根拠に基づいた適切な治療を受けることが美しい髪を取り戻すための最短ルートなのです。