AGA治療には、フィナステリドやデュタステリドといった内服薬の他に、ミノキシジルを主成分とする外用薬(塗り薬)も広く用いられています。内服薬が肝臓で代謝されることを知ると、「塗り薬なら肝臓への負担はないのでは?」と考える方も多いでしょう。この考えは、概ね正しいと言えます。ミノキシジル外用薬は、頭皮に直接塗布し、毛根に作用させることを目的として設計されています。有効成分は主に頭皮の血管から吸収され、局所的に血行を促進し、発毛を促します。体全体を巡る内服薬とは異なり、肝臓を経由して代謝される量はごくわずかです。そのため、一般的に、ミノキシジル外用薬の使用が肝機能に重大な影響を及ぼす可能性は非常に低いと考えられています。健康な人が用法用量を守って使用する限り、肝臓への負担を過度に心配する必要はないでしょう。しかし、注意点が全くないわけではありません。まず、頭皮に傷や湿疹などがある場合、そこから有効成分が想定以上に吸収され、血中濃度が高まる可能性があります。また、極めて稀ですが、体質によってはごく微量のミノキシジルにも体が反応し、副作用(動悸、めまい、むくみなど)が現れることがあります。もともと重篤な肝機能障害や心臓、腎臓に疾患がある方は、使用前に必ず医師に相談すべきです。そして、最も重要なのが、同じミノキシジルでも「内服薬(ミノキシジルタブレット)」は全く別物であるという点です。ミノキシジルタブレットは、全身の血管を拡張させる作用があり、当然ながら肝臓で代謝されます。そのため、フィナステリドなどと同様に、肝機能への影響を十分に考慮する必要があります。外用薬と内服薬、それぞれの特性とリスクを正しく理解し、自分の状態に合った治療法を選択することが大切です。