薄毛治療、特にAGA(男性型脱毛症)の治療薬であるミノキシジルやフィナステリドの使用を開始して、1ヶ月ほど経った頃。抜け毛が減ることを期待していたのに、逆に、シャンプーの時や、朝、枕を見た時の抜け毛の量が、以前よりも明らかに増えている。この現象に、多くの人が「薬が合わないのではないか」「症状が悪化しているのではないか」と、強い不安と恐怖を感じ、治療を中断してしまいがちです。しかし、この、治療初期に見られる一時的な抜け毛の増加、通称「初期脱毛」は、実は、治療が順調に進んでいることを示す、非常にポジティブな「好転反応」なのです。なぜ、このような、一見矛盾した現象が起こるのでしょうか。そのメカニズムは、AGAによって乱れてしまった「ヘアサイクル(髪の毛の生え変わる周期)」が、薬の力によって、正常な状態へと「リセット」されるために起こります。AGAが進行している頭皮には、成長期が著しく短縮され、十分に成長できずにいた、細く、弱々しい、不健康な髪の毛(その多くは、すでに成長を終えた休止期の毛)が、多数、残存しています。そこに、治療薬が作用し、毛母細胞の活動が活発化すると、その毛穴の下から、新しく、健康で、力強い髪の毛が「生え始め」ます。そして、この新しい髪の毛が、古い、いわば“居座って”いた不健康な髪の毛を、下から押し出すようにして、成長してくるのです。この「髪の毛の世代交代」の過程で、古い髪の毛が一斉に抜け落ちる。これが、初期脱毛の正体です。つまり、初期脱毛は、いわば「髪の毛の大掃除」であり、これから生えてくる、強く健康な髪のためのスペースを確保するための、必要不可欠なプロセスなのです。