「まさか自分が、と頭が真っ白になりました」と語るのは、AGA治療を始めて1年になる会社員の渡辺さん(32歳・仮名)だ。治療は順調で、抜け毛は減り、髪のボリュームも少しずつ戻ってきた実感があった。そんな矢先の、3ヶ月ごとの定期血液検査でのことだった。医師から告げられたのは、「肝機能の数値、特にALTが基準値の3倍近くまで上がっていますね」という衝撃的な言葉だった。「自覚症状は全くありませんでした。毎日体は快調でしたし、お酒も付き合い程度。だからこそ、信じられませんでした」。医師の判断で、渡辺さんは一時的にAGA治療薬の服用を中止し、生活習慣を徹底的に見直すことになった。食事内容を記録し、脂っこい外食を減らして自炊中心に切り替えた。週末の楽しみだったビールも、ノンアルコールに変えた。そして、1ヶ月後に再検査。結果は、ALTの数値が劇的に改善し、ほぼ正常値に戻っていた。「薬の影響もゼロではなかったかもしれませんが、先生が言うには、僕の場合は仕事のストレスと、それに伴う食生活の乱れが大きな原因だったのだろう、と。薬の服用が、隠れていた不摂生をあぶり出してくれたようなものです」。数値が安定したことを確認し、渡辺さんは薬の量を調整した上で治療を再開することができた。「もし、自己判断で個人輸入の薬を飲んでいたら、と考えるとゾッとします。体の異常に気づくこともなく、そのまま服用を続けていたら、もっと深刻な事態になっていたかもしれません」。この「休薬」という経験を通じて、渡辺さんはAGA治療が単に薬を飲むことではないと痛感したという。「自分の体と向き合い、健康管理をすることの大切さを学びました。医師という専門家に見守られながら治療できることのありがたみを、身をもって感じましたね」。