日本人男性の約3人に1人が発症するとされるAGA。この割合は、世界的な基準で見ると、果たして高いのでしょうか、それとも低いのでしょうか。その答えを探る鍵は「人種差」にあります。AGAの発症しやすさには明確な人種による違いがあることが、多くの研究で知られています。世界で最もAGAの発症率が高いとされるのは、コーカソイド(白人)です。国別の統計では、チェコ共和国の男性が最も高い発症率を示すというデータもあります。ヨーロッパや北米の白人男性は、30代ですでに30%以上、50歳までには約50%がAGAを発症すると言われており、日本人男性の割合を大きく上回ります。一方で、アフリカ系のニグロイド(黒人)の発症率は、白人よりも低い傾向にあります。そして、私たち日本人を含むモンゴロイド(アジア人)は、これら3つの人種グループの中では最もAGAの発症率が低いとされています。つまり、日本人のAGA発症割合は、世界的に見れば比較的低い部類に入るのです。では、なぜこのような人種差が生まれるのでしょうか。その理由は、AGAの根本的な仕組みに関わる遺伝的背景の違いにあると考えられています。具体的には、AGAの引き金となる悪玉男性ホルモンDHTを生成する「5αリダクターゼ」という酵素の活性度や、DHTを受け取る「アンドロゲンレセプター」の感受性を決める遺伝子に、人種間で差異があるのです。アジア人は、白人に比べてこの酵素の活性が比較的低く、レセプターの感受性も高くない傾向にあるため、AGAを発症しにくいと推測されています。しかし、発症率が低いからといって、決して安心はできません。近年、食生活の欧米化やストレス社会の影響で、日本人男性のAGA発症年齢は若年化し、その割合も増加傾向にあると指摘されています。世界の中での自分たちの立ち位置を知ることは、AGAという現象をより深く、客観的に理解するための一助となるでしょう。
日本人のAGA割合は世界的に見て高いのか低いのか