AGA治療における二大治療薬、「ミノキシジル」と「フィナステリド」。この二つは、作用機序が異なるため、初期脱毛の起こり方や、そのメカニズムにも、若干の違いがあると考えられています。「攻めの治療薬」であるミノキシジルは、頭皮の血行を促進し、毛母細胞そのものを直接活性化させることで、発毛を促します。そのため、ミノキシジルによる初期脱毛は、非常にダイレクトで、分かりやすい「ヘアサイクルのリセット」によって引き起こされます。ミノキシジルの強力な刺激によって、休止期に留まっていた毛根が一斉に活性化し、新しい髪の毛の生産を開始します。そして、その新しい髪が、古い髪を力強く押し出すことで、一時的に抜け毛が増加するのです。効果が強力な分、初期脱毛の現れ方も、比較的はっきりと、そして早く(治療開始2〜4週間後)感じられることが多いようです。一方、「守りの治療薬」であるフィナステリドは、AGAの原因物質である、脱毛ホルモン「DHT」の生成を抑制することで、薄毛の進行を食い止めます。フィナステリドの作用は、ミノキシジルに比べて、より穏やかです。DHTの攻撃から解放された毛根が、徐々に本来のヘアサイクルを取り戻していく過程で、弱っていた髪が抜け落ち、新しく健康な髪へと生え変わっていきます。そのため、フィナ-ステリドによる初期脱毛は、ミノキシジルに比べて、その始まりが少し遅く(治療開始1ヶ月後以降)、抜け毛の増加も、比較的マイルドである、と感じる人が多いようです。中には、フィナステリドの服用では、初期脱毛をほとんど感じなかった、という人もいます。ただし、これらはあくまで一般的な傾向です。初期脱毛の有無や、その程度は、個人の体質や、薄毛の進行度によって、大きく異なります。初期脱毛が起こらなかったからといって、「薬が効いていない」というわけでは、決してありません。重要なのは、どちらの薬を使うにしても、初期脱毛は「治療が順調に進んでいる証拠」である可能性が高い、という事実を、正しく理解しておくことです。
ミノキシジルとフィナステリド、初期脱毛の違い