なぜ治療前に血液検査が必須なのか
AGA専門クリニックで治療を開始しようとすると、ほぼ全てのケースで、まず初めに血液検査を受けるよう指示されます。これは、単なる形式的な手続きではなく、あなたの健康を守り、安全な治療を行うための、極めて重要なプロセスです。その最大の目的は、AGA治療薬を服用しても問題ない体調であるか、特に「肝機能」の状態を事前にチェックすることにあります。前述の通り、AGA治療薬は主に肝臓で代謝されるため、治療を開始する前に、あなたの肝臓が薬を分解する仕事をこなせるだけの体力を持っているかを確認する必要があります。もし、自覚症状がないまま肝炎や脂肪肝などが進行しており、肝機能が低下している状態で薬の服用を始めると、肝臓に過剰な負担がかかり、深刻な肝機能障害を引き起こすリスクが高まってしまいます。血液検査では、主に「AST(GOT)」、「ALT(GPT)」、「γ-GTP」といった項目を測定します。これらは肝細胞の中に含まれる酵素で、肝細胞がダメージを受けると血液中に漏れ出してきます。つまり、これらの数値が高い場合は、肝臓が何らかの理由で炎症を起こしているサインなのです。治療開始前にこれらの数値を測定し、正常範囲内にあることを確認することで、初めて安全に治療をスタートできます。また、この最初の検査データは、治療開始後の状態変化を比較するための「ベースライン」としても非常に重要です。治療を進める中で数値に変動があった場合、このベースライン値と比較することで、それが薬の影響によるものなのかを判断する材料になります。医師の管理を介さない個人輸入などでは、この最も重要な安全確認のステップが完全に抜け落ちてしまいます。血液検査は、安全な航海に出る前の、いわば船体の点検作業なのです。