インターネットを通じて海外から安価にAGA治療薬を購入できる「個人輸入」。その手軽さと経済的なメリットに惹かれる人は後を絶ちません。しかし、この個人輸入という選択肢は、肝臓という観点から見ると、極めて危険なギャンブルと言わざるを得ません。そのリスクは、主に三つの側面に集約されます。第一に、「健康状態の未確認」というリスクです。正規の医療機関であれば、治療開始前に必ず血液検査を行い、あなたの肝臓が薬の代謝に耐えられる状態かどうかを確認します。しかし、個人輸入ではこのプロセスが完全に欠落しています。自分では健康だと思っていても、気づかないうちに脂肪肝や慢性肝炎が進行している可能性は誰にでもあります。そのような状態で、医師のチェックなしに薬を飲み始めることは、炎上している家にガソリンを撒くような、無謀な行為に他なりません。第二に、「偽造薬・粗悪品」のリスクです。個人輸入で流通している薬の中には、有効成分が全く入っていない偽物や、逆に過剰に含まれているもの、さらには肝毒性のある不純物や未知の化学物質が混入している粗悪品が紛れ込んでいる可能性があります。これらを服用すれば、健康な肝臓であっても深刻なダメージを受ける危険性があります。中身が何であるか、品質が保証されているかどうかが全く分からないものを、自分の体に入れることのリスクは計り知れません。そして第三に、「副作用発生時の無策」というリスクです。万が一、個人輸入薬が原因で肝機能障害を発症し、倦怠感や黄疸といった症状が現れても、相談できる専門家はいません。治療は全て自己責任となり、日本の「医薬品副作用被害救済制度」の対象にもならないため、高額な医療費も全て自己負担となります。目先の安さと引き換えに、あなたはこれら全てのリスクを、たった一人で背負い込むことになるのです。
個人輸入と肝臓リスクの見えない危険性